若者が車に夢を見なくなったのはいつからだろうか。
車は単なる道具ではない。車は、豊かな生活、そして、若者の明るい未来のアイコン(象徴)である。
私たちのギネス挑戦の根底には、この国の全世代に対する「車の楽しさを思い出してほしいと」の願いがあった。
今回追求したテーマは、① 車への情熱を再燃させる、夢と魅力のある車作り、
② 高校生が授業で身に付けた技術により、もの作りで世界記録を更新する痛快さ、の2点である。
ギネス認定のためには公道走行可能が条件。「ミニカー」という規格を採用し、
当初のレイアウトは49㏄のガソリンエンジンを搭載したRR ミッドシップだった。
製作担当は自動車科の精鋭、自動車整備部の生徒11 名と、同科の先生たち。同部員は自車科の
中でも特に車好きの精鋭で、普段はゼロハンカーの製作をしている。
ガソリン自動車としてはほぼ完成しつつあった頃、「今の時代なので、電気自動車にするべきでは」との提案が。
全国自動車教育研究会を通じて寄贈された電気自動車Q-CAR の動力ユニットを採用し再設計したが、
12V の鉛バッテリー6基を搭載するため、約100 ㎏の重量増に。この結果、シャシー等ほとんど
全てのパーツを再製作。
2010年11月15日午後1時を完成披露と定めていたが、完成したのは同日12時55分、実に5分前。
披露式には新聞・テレビ等が取材に来られ、反響の大きさに驚いた。
そして、いよいよギネスに申請。公正証書を英訳するなど、
すべての申請作業が終わり、書類が受領されたのは2011年3月11日。
そして、約11週間後の2011年6月3日、ついにギネス本部より認定状が到着した。
同封の送り状には"Welcome to the very select club of Guinness World Record holders.
(ギネス記録保持者の非常に限られたクラブへようこそ)"とあった。
『目指せ、日本一の自動車科』をスローガンとするおかやま山陽高校自動車科は、ついに世界一を達成した。
生徒たちの自動車にかける情熱は一途で純粋である。鉄は熱いうちに打たれるべきであり、
その環境と機会を準備することが、我々大人の責務である。
本校は今後も、生徒の情熱を形にするための次の目標を定め、さらに挑戦を続けていく。
車名の"MIRAI"は、生徒が命名した。若者たちはすでに未来の世界に生きているのだ!
平成21年 秋頃 | プロジェクトスタート |
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平成22年 4月 | ガソリン車として製作開始 |
平成22年 8月 | 電気自動車に設計変更、製作開始 |
平成22年11月15日 | 車両本体完成、発表披露会 |
平成22年11月18日 | ギネス申請予備登録完了(一次受理) |
平成23年 3月11日 | ギネス本申請完了 |
平成23年 6月 3日 | ギネス世界記録認定証到着 |
現在、ギネス記録として認定されている世界一車高の低い車(ドイツで開発、車高19インチ=約48cm)の記録を1 インチ(2.54cm)下回る新記録(約457mm) を樹立するため、おかやま山陽高校自動車科・自動車整備部の教職員・生徒が協力し、電気自動車をベースに製作。構想期間約1年、製作期間約6ヶ月。
・車名:「MIRAI(ミライ)」(仮称)
・車体サイズ:2,480㎜(全長)×1,254㎜(全幅)×452㎜(全高=17.79 インチ)
・駆動方式:ホイールインモーターによる電気駆動(バッテリー6 基搭載)
*ドライブユニットは、「Q カー」(CQ モータース製)を使用
・車両区分:ミニカー(原動機付小型四輪車、ナンバー:「浅口 ・・60」)
・定 員:1 名、最高時速60km
・厚さわずか35cmのボディーにすべてのパーツを納めるため、
サスペンションコイルは、横に寝かせる方式(F1と同じ方式)を採用。
・同じく、円形のステアリングホイールでは収まらないため、
プッシュロッド方式のステアリングを採用。
・実用走行を可能にするため、前後とも90mm 以上のロードクリアランスを確保。
・バッテリーだけで80kg ほどもの重量があるため、シャシーの強度を確保。
・公道走行が条件となるため、保安部品一式を完全装備。ヘッドライト、
ブレーキライト等は、すべてLEDで自作。
車名 | MIRAI(ミライ)/OSHA |
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車体番号 | K00655 |
排気量または定格出力 | 0.29×2kW(580W) |
種別 | 第一種原動機付自転車(四輪) ミニカー |
燃料の種類 | 電気 |
最高速度・前進/後退(km/h) | 50/15 |
全長×全幅×全高(mm) | 2,480×1,254×452 |
ホイールベース(mm) | 1,660 |
トレッド(mm) | 前962/後822 |
最低地上高(mm) | 前94/後98 |
車両重量(kg) | 280 |
乗車定員 | 1 名 |
1充電走行距離 80km(30km/h 定地走行) | 80km(30km/h 定地走行)60km(10 モード) |
メインバッテリー 密閉型鉛電池 | 密閉型鉛電池 12V×42Ah×6 個(72V) |
補機バッテリー 密閉型鉛電池 | 密閉型鉛電池 12V×28Ah×1 個(12V) |
充電装置 | 3段階 定電流 定電圧充電 |
制動方式 | 4輪ドラムブレーキ(前:機械式 後:機械式) |
原動機・駆動方式 | 永久磁石型同期電動・後輪ホイールイン直接駆動 |
サスペンション方式 | 前:ストラット式/後:トレーリングアーム式 |
標準充電時間(h) | 8h 程度 |
・ 山陽レジン工業株式会社様(FRP ボディー製作ご指導) 代表取締役守屋邦夫様、岡山市藤田
・ ㈱パドック様(各種パーツご提供) 代表取締役岡本辰彦様、津山市下田邑